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2008年11月 9日 (日)

ブリーダーズカップ回顧 -クロスオーバーする世界-

既に、天皇賞、JBCクラシックと見応えのあるレースを見てしまった後だが、ここで、ブリーダーズカップを回顧しておこうと思う。

日本的には、カジノドライヴが惨敗した、ということで、完結してしまっている気がして、非常に暗澹たる思いにさせられてしまうのだが、今回のブリーダーズカップには、非常に重要な要素があったことをここに記しておきたいと思う次第。

各レースを振り返るという形式も考えてみたが、ここはブリーダーズカップクラシックにおいて現出したヨーロッパ調教馬によるワンツーフィニッシュという事象の重要性について語るべきと判断した。これは、アメリカのみならず、ヨーロッパや日本の競馬をも、大きく変動させかねない大きなうねりの序章に過ぎないと私は考えている。

ご存知の通り、クラシックでは、ダート最強馬カーリンが敗れ、ヨーロッパから遠征したレイヴンズパスが快勝し、同じくヨーロッパのヘンリーザナヴィゲーターが2着した。

これは、彼らが強かったという以上に、オールウェザー(AW)、とりわけ、プロライドという素材を使用したサンタアニタの馬場は、アメリカンダートトラックとは似て非なるものであり、それは、ターフコースで必要とされる要素を多分に含むコースであるということである。

つまり、乱暴に言ってしまうと、グラスホースに有利なコースであるということである。

そもそも、AWというコースは、登場した当初から、芝コースに似通ったコースである、グラスホースの対応できるコースである、ということは言われてきた。

現に、この数年、アメリカ国内においては、芝→AW→ダート、ダート→AW→芝という路線変更を成功させる事例が増加してきた。そして、そのノウハウを持って、コースを横断して出走させることは、さして珍しくないことになってきている。

しかし、今回は、よりドラスティックな結果となった。

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今回、私は初めてブリーダーズカップデーをストリーミング放送でライブ観戦することが出来た(本当は、TV放送を見れれば、それに越した事は無かったのだが)。それを見ていて感じたことは、AWにおけるレースの様相が、これまでに見てきたダートレースのものとは異なり、芝のレースのような瞬発力勝負の様相を呈していたということである。

そんな中、クラシックも同様のレースとなり、先行馬を直線で捕らえたカーリンを、後から、ヨーロッパの2頭と定位置の後方に位置していたティアゴが差して来た。

ここで、好走したこれらの馬と、人気を背負いながら、凡走した馬、数頭を比較検討してみようと思う。

まず、史上初めてBCクラシックをワンツーで決めた欧州のトップマイラーの三歳馬二頭。

・レイヴンズパス(牡3歳)

英、J・ゴズデン厩舎。Elusive Quality産駒のアメリカ産馬。2歳デビュー時から、一貫してマイル路線を歩み、セントジェームスパレスSやサセックスSでヘンリーザナヴィゲーターの2着となり、その後、クイーンエリザベスⅡ世Sで、ヘンリーザナヴィゲーターやタマユズといったトップマイラーを降して、GⅠ制覇。直前に急遽出走を表明しての参戦となった。

・ヘンリーザナヴィゲーター(牡3歳)

愛、エイダン・オブライエン厩舎。Kingmambo産駒のアメリカ産馬。2歳デビュー時から、マイル路線のトップホースの一頭として注目を浴び、2000ギニーからサセックスSまで、GⅠ4連勝。<ザ・ロック。ロックオブジブラルタルや<アイアンホース>ジャイアンツコーズウェイの再来かと話題に。シーズン後半はやや失速したが、マイル路線の主役として転戦。比較的早くからBC参戦は示唆されていたが、当初はマイルとクラシックの両睨み。最終的にクラシック参戦となった。

この二頭には、多くの共通点が見て取れる。

芝・ダート兼用の父を持ち、その競走生活はヨーロッパの芝レースに終始し、その距離カテゴリーはマイルであるということ。また、キャリア10戦程度の三歳馬であるということ。

戦績が少ない(といっても、10戦はあるわけだが)三歳馬ということで、適性が固定化されていない、つまり、対応能力が高い状態での参戦となったことも今回の好走に繋がったと言えるであろう。

この二頭の違いは、Elusive Qualityという、アメリカにより適性を示している種牡馬と、どちらかというと欧州に適性のあるKingmamboという差が最終的な着順に繋がったのだろう。勿論、デットーリという騎手の要素も大きかったと思う。嵌った時のデットーリには、どんな騎手でも太刀打ちできない。

次に、3着馬。

・ティアゴ(牡4歳)

昨年からトップホースの一員として重賞戦線の常連だったが、後方からの追い込み脚質もあり、勝ち味に遅い傾向にあった。今回は、馬場の特性と展開、そして、カーリンの失速によって、3着に食い込んだ。そして、いみじくも、ティアゴも距離適性は短めにシフトしている(千八がベスト)。これも今回のレースの重要な要素の一つであろう。

ここで、最も重要な馬。ダート競馬、現・世界最強馬

・カーリン(牡4歳)

結果から言ってしまえば、この馬はダートの最強馬であって、AWの最強馬ではなかったということであろう。そして、カーリンの負け方は、ターフレースである、前々走のマンノウォーSでの負け方と非常に重なるものがある。これは、このAWというコースがターフコースに酷似しているということの証左ともなると思う。そして、これまでカーリン陣営が、AWを使わなかったことは、非常に賢明であったというべきだろう。

距離的なことに関して言えば、この馬はデビュー戦以来、マイル以下を走ったことがない。このことも今回の結果には、影を落としているかもしれない。

次に、芝のトップホースの一頭。

・デュークオブマーマレード(牡4歳)

現在、欧州において、最もファッショナブルな血統といっても良いデインヒルの系統である本馬。昨年までのマイル路線では、堅実ながらも、脇役に甘んじることの多かった馬が、今年距離延長で大変身。春から夏にかけてのGⅠ五連勝は圧巻だったが、凱旋門賞の展望でも指摘したが、この馬の適性は10ハロンから12ハロンにあり、マイルでは短すぎたというのが、今回の結果に大きく影響しているように、今となっては思える。

レースでは、見せ場すらなく、9着惨敗。シーズン後半のアクシデントや、調子が下降気味だったといったことや、4歳という競走年齢で資質が固定化(完成)してきたということも影響しているだろう。要するに、ここは彼の走るコースではなかった、ということだろう。

ここで、日本人的に、取り上げなければならない馬。

・カジノドライヴ(牡3歳)

血統的に大きく注目され、一連のベルモントSに向けた遠征で、日米ともに名を知らしめた馬。ピーターパンSでの完勝から、日本馬によるアメリカクラシック制覇の期待が膨らんだが、直前でのスクラッチ。アメリカ側での厩舎の調教スタイルに関する批判なども出るなど物議も醸した。しかも、結果がビッグブラウンの三冠達成どころか、あまりにも意外なアンチクライマックスなものだっただけに、余計に悔やまれる結果だった。スクラッチの原因となった挫石が長引き、今回のBCへの遠征も危ぶまれたが、何とか間に合い、アローワンスを叩いての臨戦となった。

結果的には、先手を奪うも直線に入る頃には失速。最下位での入線となった。

この結果には、些か落胆もさせられたが(期待の程は、先のBC直前のエントリーを見て下さい)、彼が凡走する要因は、戦前から幾つも指摘されていたし、それらの正当性を私も認識していたので、納得する部分もある。経験の無さ、挫石からの一連の流れ、或いは、今年のキャンペーン自体の問題。そして、本馬のそもそもの実力といった事柄。

ただ、レースの終わった今考えて見ると、しかも、上記の好走馬、凡走馬の分析をしていく中で、思ったことがある。陣営も指摘したAWが向かない、と言う点。私もそれは思う。ただ、それだけでは不十分な指摘で、この馬はアメリカンダートのチャンピオンディスタンス、もしくは、それを越える距離に適性のあるステイヤーなのではないか、ということである。

まあ、単純に、ベルモントSを連覇した兄弟を挙げただけで、事足りることなのかもしれないが、これまでに述べてきたことで、気付かされる事は、

「今年のBCクラシックにおいて必要とされるスピード量と芝適性(芝適応力と言ってもいいかもしれない)に、カジノドライヴは見事に合致していない」

と言うことである。

ここまで述べてきたように、今回の好走馬は、欧州のマイラーである。芝適性について言及するのは、何ら不自然ではない。そして、同じく欧州から遠征したチャンピオンディスタンスホースは全く良い所なく惨敗した。これはマイラーの持つスピード量が要求されていたことを指し示してはいないか。

血統的にも、歴代ダートコースのレースにおいて、チャンピオンを輩出してきたシアトルスルー系の本馬は、レース振りとしては、少ないながらもダート競馬のオーソドックスなスタイルを踏襲している。キャリアやレースレベルの違いはあれど、カーリンのレース振りとも重なる。ということは、このコースのダートコースとの乖離性を証明してはいないか。

そんなことを考えていると、そうでありながら、掛かったにせよ、先行し、一応レースに参加し得たカジノドライヴという馬とチームには、絶望ではなく、幾らかの希望を見出しうるのではないかとも思えてきたのである。

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ここで、タイトル、そして、最初の問い掛けに話が及ぶ。(死ぬほど長くてすみません^^)

今回の結果を受けて、欧州の競馬関係者は、間違いなく、来年のBCクラシックというか、米国遠征のスタンスを変えてきます。

BCだけに話を絞れば、間違いなく、マイルから10ハロンのスピード色豊かな馬(米国風味の血統が加味されていれば完璧)を遠征させるでしょう。オブライエンなどはもう、その候補を考えているかもしれません。ゴドルフィンも既に、トレードする馬の選定や日程を調整しているでしょう。

ここで、日本はどうでしょう?

カジンドライヴの惨敗を受けて、陣営はAWには出走させず、ダートレースを対象とした遠征を示唆しています。正しいアプローチでしょう。

しかし、それ以外の反応は皆無。

私は、今回の結果は、ある意味日本競馬にとって、非常に大きなチャンスが巡って来たと感じています。

それは、やはりSS系というキーワード。

ここで、これまでに見てきた様々な要素を考えてみる。つまり、AWでのクラシックは、芝のマイル~10ハロン程度の距離で必要とされるスピードを持ち、血統的には、ダートの要素を持つというもの。

これはサンデーサイレンス系の馬が多く持つ要素だと思う。

勿論、だからと言って、すぐに勝てるわけが無いという意見が多数出てきそうだが、これまでそのようなアプローチが取られたこと自体、皆無である以上、それは成功するとも、失敗するとも言えない。少なくとも、欧州の二頭の成功から何かを感じ取る気概が無ければ、伝統の欧州と質量のアメリカに立ち向かうことは、おそらく出来まい。

どうも日本の競馬関係者は、「芝でトップに立てば、凱旋門賞」「ダートでトップに立てば、ドバイWC」という単純な理論展開をしているが、よりアグレッシブな考え方をしていかなければ、上回ることは出来ない。

恐らく、現在競馬の中心は、アメリカにあることは、疑う余地は無い。それは、BCというレースに伝統の欧州のトップホースが大挙して遠征している現状を見ても、それは明らかである。つまり、アメリカのレースを制したものが、世界の競馬の覇権を握るのである。

今年、欧州は、アメリカ競馬の本丸に、大きな風穴を開けた。

それは、日本競馬にとっても、チャレンジする価値のある結果を導き出している。勿論、アメリカも黙ってはいないだろう。AWの競馬場を減らすというような、乱暴な手段をも使ってくるかもしれない。

今、世界の競馬は、芝、ダート、AWというカテゴリーの垣根を越えて、大きく動き出そうとしている。

ここに日本の競走馬が、果敢に挑戦する姿を私は見たいのだ。サンデーサイレンスの血を持った日本馬が、アメリカのAWのトラックを雄々しくトップで走る抜ける姿を。

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